『調子は別段悪くないのに、エンジンチェックランプが点灯してしまい、ユーザーが気味悪がって点検を依頼してきた。するとO2センサー(空燃比を理想空燃比に維持するためのセンサー)の故障コードが読み出された。』という場合がある。しかしこの現象は、OBD2を採用したエンジンのECUの自己診断機能が、OBD1より優れていることを表している。
例えば『P0171:リーン異常』というDTCが読み出されたとする。このDTCは『本来は理想空燃比14.7に維持されなくてはならない運転状態で、空燃比が大きい状態、つまり燃料が薄い状態が一定時間続いた』ということを表している。
この場合、原因はまず二つ考えられる。一つはO2センサー自体が間違った信号を出している場合、もう一つはO2センサーは正常で、なにか別の原因で本当に燃料が薄い状態が続いた場合である。
後者の場合、考え得る原因を列挙してみると以下のようになる。これらの推定原因に沿って、各部の点検を進めていくことになる。
- エアフローメーターが吸入空気量を少な目に測定している。
- インジェクターが詰まり気味である。
- 燃圧が低下している。
- 点火時期の制御がおかしい。
- インテーク側でエアを吸っている。
- エキゾースト側で排気ガスが漏れている。
この二つの他に、第三の原因と言えるものが考えられる。それはO2センサーが一時的に不調になったというものだ。
日本では必ずしもそうではないが、欧米ではO2センサーは“定期交換部品”と考えられている。O2センサーに限らず、自動車の部品の機能は年月を追うにしたがい図のようなカーブを描いて低下していく。どんな部品も完全に損壊になる前に、必ずなんらの兆候を見せる。
これが機械部品なら時々変な音がするとか、触ってみると異常に発熱しているという現象が生じる。O2センサーが一時的に不調になるということは、そろそろ寿命が尽き掛けているということだ。こうした場合はO2センサーを交換すれば、もちろん症状は収まる。
このようにOBD2なら、センサーの寿命が尽き掛けているといった情報も得ることもできる。言い換えれば“故障検知の感度が良くなった”ということになる。だから『調子は別段悪くないのに、エンジンチェックランプが点灯する』というケースも起こり得る。