近年、自動車の安全・環境性能の向上の必要性が高まっており、従来の機械式制御から、各
種センサーから得られる情報を用いて車両の挙動を電子的に制御・調整する新技術の利用が広
がっている。自動車ユーザーがこのような新車時における優れた安全・環境性能を享受し続けるた
めには、使用過程時においてもその性能を維持することが必要であり、適切な点検整備の実施体
制を確保することが重要である。そのためにも、自動車ユーザーに対するアドバイザーでありホーム
ドクターとしての役割を担っている自動車整備事業者にとって、このような新技術に対応した整備
技術の向上が必要な状況にある。
整備技術の向上に関しては、これまでも、一級自動車整備士制度の創設(平成 14 年度に技能
検定試験を実施。)や整備主任者研修等を通じて図ってきたところであるが、近年の自動車の新
技術の普及に伴い、整備技術の技術的基盤強化を図るため、新技術に係る点検整備情報の提
供やスキャンツールの普及、新技術に対する知識等を深めるための研修の充実等が必要となって
いる。
今般、スキャンツールの普及、新技術に対する研修の充実等を図るため、平成 22 年 7 月 30
日、学識経験者、関係業界及び行政機関等からなる「汎用スキャンツール普及検討会」を設置し、
汎用スキャンツールの標準仕様や普及促進策について検討を開始した。
また、標準仕様の検討にあたっては、国際的な商品である自動車を対象とするものであることか
ら、将来的な国際調和を図ることを念頭に検討を進めることが求められるため、諸外国の状況に
ついても調査を行うこととした。
なお、点検整備情報の提供については、国土交通省、一般社団法人日本自動車工業会及び
社団法人日本自動車整備振興会連合会からなる「OBD の利用等に係る車両メーカーの情報提
供のあり方検討会」において、環境OBD診断ツール に係る整備についての情報提供のあり方について、既に規
定化されている欧米を参考にしながら、平成 21 年 12 月に中間とりまとめを行っている。その後、
日本自動車輸入組合も加わり検討を行った上で、平成22年9月にパブリックコメントを実施、平成
23 年 3 月 2 日に「J-OBDⅡを活用した点検整備に係る情報の取扱指針」(平成 23 年国土交通
省告示第 196 号)が制定された。この指針は、点検整備を行う際に必要となる情報の提供のほか、
スキャンツールの開発や改良に必要な情報の提供、自動車製作者等が自ら開発する専用スキャ
ンツールの提供等について、その内容や方法を定めている。